北朝鮮女子代表が南北戦を制す

 東アジアカップの女子第1戦は21日、ソウルワールドカップ競技場で韓国と北朝鮮が対戦し、北朝鮮が2−1で逆転勝ちを収めた。


 8年ぶりに韓国で行われた女子サッカーの南北対決らしく、緊張感がピンと張り詰めていた。両チームの選手たちはアップするためにピッチに出たときも、試合前の握手のときも、固い表情だった。ピッチではこれまで以上に激しい対決が繰り広げられた。だが選手たちはフェアプレーを忘れなかった。


 後半の終了間際、韓国のエース、池笑然チ・ソヨン)が足の痛みを訴えて倒れると、北朝鮮のキム・ナムヒが近寄り、韓国の朴熙栄(パク・ヒヨン)と共に池笑然の足をマッサージした。試合が終わると両チームの監督は手を取り合い、笑顔で言葉を交わした。韓国女子代表の尹徳汝(ユン・ドクヨ)監督は、北朝鮮の金広民(キム・グァンミン)総監督について「1990年の統一サッカーの際に共にプレーした友人。こうして再び会えてうれしかった」と語った。北朝鮮の金広民総監督は記者会見で「23年ぶりにユン監督に会った。南(韓国)の女子サッカーはとても発展した」とエールを送った。


 韓国はこの日、世界の女子サッカーの強豪、北朝鮮と互角の試合を繰り広げたが、惜しくも敗れた。北朝鮮との成人女子の直接対決では8連敗。通算対戦成績は韓国の1勝1分け12敗となった。


 先制したのは韓国。前半26分にキム・スヨンがゴール前の混戦から左足で正確にシュートを決めた。だが北朝鮮は前半35分と37分にホ・ウンビョルが相次いで得点し、一瞬にして逆転。ホ・ウンビョルは2010年のU20(20歳以下)女子ワールドカップ(W杯)の1次リーグで北朝鮮がブラジルを1−0で破った際に、18歳にして決勝ゴールを決めた。そのホ・ウンビョルがこの日も2点を挙げる大活躍。韓国は後半何度かチャンスをつかんだが、得点にはつながらなかった。


 会場には6500人の観客が詰め掛け、さまざまな声援を送った。太鼓を鳴らしながら応援歌を歌った韓国代表応援団「レッドデビルズ」は、北朝鮮の選手が倒れた韓国の選手を起こす姿などを見て大きな拍手を送った。東側3階観客席では、ある市民団体が水色の紙を掲げ、人文字で韓半島朝鮮半島)を描いた。アウェーの応援席付近では在日本朝鮮人総連合会朝鮮総連)の会員20人余りが北朝鮮に声援を送った。韓国統一部(省に相当)の柳吉在(リュ・ギルジェ)長官と、1989年に訪朝した野党・民主党の林秀卿(イム・スギョン)議員も観戦した。


 南北サッカー対決を観戦するために会場を訪れた脱北者たちも目に付いた。咸鏡南道出身だというある脱北者は「北朝鮮の女子はがむしゃらだ。男子サッカーはともかく、女子サッカー北朝鮮の方がワンランク上」と語った。


 勝利の立役者となった北朝鮮のホ・ウンビョルは、テレビの生中継のインタビューに応じるなど異例の対応を見せた。ホ・ウンビョルは「団結した民族の力を見た。韓国に来て同胞の応援を聞いて、力がみなぎった。今後も(韓国と北朝鮮が)互いの経験を伝え合い、ワールドカップを目指そう」と語った。


 韓国女子代表は24日午後5時15分から、華城総合競技タウンで中国と、27日午後8時からは日本と対戦する。