ハーノファー日本代表DF酒井宏樹にドイツ紙が日本語で「ドイツ語が問題」〔ブンデス〕

30日付けドイツ『シュポルト・ビルト』は、ハノーファーDF酒井宏樹についての特集記事を掲載した。タイトルは日本語で記されており、「ドイツ語が問題」。見出しのとおり、同選手のコミュニケーション能力に苦言を呈す内容だ。その一方で、この問題が解決されれば、とクラブは期待を寄せている。

同紙は、酒井がこれまでドイツのサッカーに馴染めなかった理由をコミュニケーション能力としている。その例として同紙は、最近のエピソードを紹介。チームメートのヤン・シュロイトラフ、ラース・スティドル、コンスタンティン・ロイシュとレストランへ行ったとき「魚、肉料理、チキンのどれにする?」と聞かれて、酒井は答えられなかったそうだ。

ピッチ外の言葉の問題はスマートフォンなどで乗り越えられるが、ドレッシングルームでの会話には参加できず、いまいち溶け込めていない姿がよく見られるという。しかし、最も重大なのは、ピッチでミルコ・スロムカ監督の指示を実行できないことだと同紙は指摘した。

前半戦において、酒井の起用はリスクと見なされた。チームメートの呼びかけは理解できない。逆に自分からも指示を出せない。そのような状況についてスロムカ監督は当時、「選手が戦術的な指示を理解し、直ちに実行できるのがポイントだ」と述べていた。

本人は「僕はどうしてもヨーロッパでプレーしたかったし、新しい文化も体験したかった」と語る。両親も移籍を勧めたようだが、現在の酒井は、新しい環境への「適応が大変」と言う。

酒井は「日本では183センチだと、常に一番の高身長だった」と話すが、ハノーファーのチームでは16番目。「ここではすべてが違う。競り合いに入るときも、違うやり方になる。ブンデスリーガのサッカーはより速くて、よりフィジカル」と、サッカーの違いについても語っている。

そのような問題を解決するため、ハノーファーは1月頭に今夏までの契約で、酒井の通訳として日本人を雇った。マーティン・キント会長は「ヒロキがもっと馴染むために、何かしなければいけないことに気付いた。彼は少し孤独を感じ、不安になっていた。『案内役』を必要としていた」と話している。

その『案内役』を担当することになったカワハラモトキ氏は、「トレーニング中はピッチサイドに立ち、スロムカ監督がチームに戦術的な説明をする際、それを日本語に訳す。監督は「『モト』(カワハラ氏)の通訳のおかげで、より早く求めていることや試合と練習で重要な点を伝えられる」と語った。

カワハラ氏は「ヒロキのそばには同国人がいる。ドイツで疑問があったら常にサポートする」と、サッカーに限らず、プライベートでも支える考え。酒井は周囲に頼るだけでなく、現在週2回ドイツ語の授業を受けている。「左」「右」「前」「後」など、基礎的なところは分かっているようだ。

クラブ側は、酒井が後半戦に語学の問題などを解決でき、2011年にJリーグベストヤングプレーヤー賞に選出された実力を証明することに期待をかけている。スロムカ監督は「ヒロキはかなりの努力家だ。自分の(サッカー選手としての)職業に対し、素晴らしい心構えと向上心を示している。常にすべてを完璧にこなそうとしている」と、酒井の成功を不安視していないようだ。

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